何度も死にかけたが、恥ずかしながら生きている。

熱っぽい、しんどい。風邪か、インフルエンザか、はたまたコロナなのか。

子供の頃から病気のデパートだったので、体調の悪い時は決して無理はせず、対戦相手をよく観察して戦いに挑むことを身に着けた。

仕事帰りに、冷蔵庫の中身を思い出してスーパーに寄り、両手いっぱいに買い物をして帰る。卵が足りない、牛乳とリンゴジュースも買っておこう。お粥のお供のなめたけと海苔の佃煮も。普段から風邪薬や解熱剤、水や缶詰、レトルト食品は買いだめしてある。

風邪の初期には葛根湯を飲んで、ビタミンと水分を摂って寝て治す。首にタオルを巻くことを忘れずに。昔、台湾に行って熱を出した時、ホテルのおばさんが、オレンジジュースに塩を入れて飲みなさいと言ってた。あれはビタミンと汗で失われた電解質を補給するための知恵だったんだな。

もう少しひどくなったら、ホッカイロ療法が加わる。冬の間に1年分のホッカイロを箱買いしている。首の後ろに風池(ふうち)という風邪のツボがある。そこと、症状に応じて脇の下やおなかにもカイロを貼る。全身の関節が耐え難く痛むときは、肘や膝、股関節に小さいカイロを貼ると、痛みがずいぶん楽になる。熱が高くなってきたらアイスノンで頭を冷やしつつ、体は温めて汗を出す。

しかし、相手がインフルエンザウィルスなんかだと、できるだけ早めに病院に行く。そんな極悪ウィルスの野郎と戦っては勝ち目がない。

昔、車通勤をしていた時、職場で急激に体調が悪くなったので早退した。運転している間にも、どんどん熱が上がってきて、自宅に到着する500mほど手前で、脳みそがチンチンと音を立てて沸騰し始めた。ガレージに駐車することもできず、家の前に車を乗り捨てて自宅に駆け戻り、解熱剤の座薬を入れてベッドに倒れこんだ。熱はよく出すのだけど、40度の発熱体験は初めてだったと思う。体ががたがた震えて、あわわわと勝手に声が出る。本当にからだが沸騰状態だった。これは死ぬぞ、と思ったのだけど、ひとりだと病院にすら行けない。

しかし、しばらくして解熱剤が効いてきて、少し熱が下がって楽になった。パジャマを着替えて熱を測るとまだ38度あった。解熱剤が切れてくると再び脳みそ沸騰、二回目の解熱剤投入で、また少し熱が下がって楽になる。そして再び熱が上がり始め、三度目の解熱剤投入、また少し下がって楽になった。そしてまた熱が…。しかしそれからは、38度より上がらず、熱はあるものの何とか持ちこたえた。

翌日、動けるようになってから病院に行ったが、もうタミフルが効く段階ではなく、一応服用はしてみたものの、なぜか肘から先に小さい赤い斑点が出てきて中止。もうそのまま安静にしといてください、で終わった。全快するまでに1週間ほど要した。その間、準備しておいた食料がどれほど役に立ったか。

おととしはコロナになって、さらに恐ろしい状態を経験したが、また復活させてもらった。

思えば、3歳の時に結核になり、それ以降もひどい喘息発作のために救急車で何度も運ばれた。そしてお腹の切腹手術も2回経験した。

もし50年早く生まれていたら、あるいは発展途上の国に生まれていたら、何度死んでいたことだろう。現代の日本に生まれたお蔭で、何度も死にかけたが、恥ずかしながら生きている。ごめんなさい。

生きててもええかあ? ええでぇー。